リードタイムとは
リードタイムとは「オーダーから完了までの期間」のことです。一般的には、発注(受注)から納品までの所要時間を指します。サプライヤーに発注して部品が届くまでの時間や、顧客から注文を受けてから納品するまでの時間がリードタイムです。
製造業において「リードタイムの短縮」は重要課題のひとつ。なぜなら、顧客へいち早く製品を届けることができれば顧客満足や利益につながるためです。
リードタイムの短縮といってまず思い浮かぶのは在庫を確保することでしょう。
多くの在庫を積んでおけば、いつ注文がきても即納することができます。いわゆる見込み生産と呼ばれる状態です。
しかし、需要予測が外れてしまえば大量の在庫が陳腐化するリスクがあります。
一方で、在庫を極力少なくして、注文を受けてから生産するケースはどうでしょうか。
これなら在庫が過剰となるリスクは避けられますが、今度はリードタイムが長くなるリスクが生じます。一般的にリードタイム短縮と在庫削減はトレードオフの関係にあるのです。
いままでは大量・見込み生産が主流でしたが、これからの企業は多品種少量生産にも対応しなければなりません。そのため、多くの経営者は過剰在庫を持たずにいかにリードタイムを短縮するか考えていく必要があります。
そこで今回は「リードタイムにはどういった種類があるのか」という基礎を振り返り、リードタイムの短縮のメリットを詳しくみていきましょう。
リードタイムの種類
リードタイムは何種類かあり、通常はオーダーの内容によって区別します。
開発
新製品を計画・立案してから設計が完成するまでの期間です。競合他社にはない新製品を市場にいち早く投入すれば先行者利益を享受できます。
出荷(輸送)
出荷の際に使われるリードタイムは、「出荷指示を受けてから納品するまでの時間」を意味します。物流センターや倉庫で商品をピッキングし、梱包、荷積み(トラックへの積み込み)、客先への納品までにかかる時間のことです。
輸送だけに限定していえば、トラックへ積み込みしてから客先に届くまでの時間をいいます。
製造(生産)
製造リードタイムは、「製造指示を受けてから、実際に現場が製造に着手、工程が完了するまでの時間」という意味です。生産といった場合には、「生産のオーダーを受けてから納品までの時間」を指すこともあります。
製造リードタイムは、製品の仕様設計の段階で必ず考慮されるもので、仕様書にも記載されています。
調達
調達に関するリードタイムは、「外部業者へ発注してから部品が届くまでの時間」です。資材や部品をサプライヤーから注文する際には、納品までに一定の期間空くため、このリードタイムを考慮して生産計画を立てなければなりません。
リードタイム短縮のメリット
製造業においてリードタイムが重要視されるのは、リードタイムの短縮によりさまざまなメリットがあるからに他なりません。
省力化
製造リードタイムを短縮しようと考えた場合、産業用ロボットの導入が頭に浮かぶのではないでしょうか。多くの工場で製品の段積みやベルトコンベアからのピッキングなどに産業用ロボットが導入されています。
製造時間の短縮だけでなく、従来は人の手に頼っていた重労働を産業用ロボットが代替することにより、省力化が実現できます。
また、小ロットで製造したほうがロットの待ち時間が少なくて済みます。例えば100個ずつのロットで搬送するより、できた端からロボットが1個ずつ搬送したほうが全体にかかる作業時間を短縮できるのです。
コストダウン
リードタイムの短縮によるコストダウンの中身は、人件費と在庫コストの減少です。
人件費が利益を圧迫しているなら、工賃削減は有効な手段です。製造リードタイムの短縮によって製品原価に占める工賃を削減できれば、原価低減を達成できます。
ほかに製造から出荷までの時間が短ければ短いほど、在庫補充のペースも速く、保有在庫が少なくて済みます。在庫を多く抱える必要がないので、在庫管理のコストダウンとなります。過剰在庫を抱えないため、棚卸しに必要な時間や人員も少なくなるのもメリットです。
短縮で気を付けるポイント
リードタイムを短縮するうえで気を付けたいポイントは、現場の状況を確認せずに安易に取り組まないことです。
ある工程にかかる時間を削減しようと思っても、そもそもの正味作業時間が短ければあまり効果はありません。そのため、本当にリードタイム短縮が必要な状態かを確認する必要があります。
ボトルネック工程を洗い出したり、無駄な作業がないかを列挙したりなど、現状の課題を把握することが大切です。
リードタイム短縮の有効策
ではリードタイム短縮を図るうえで具体的な方策にはなにがあるのでしょうか。有効となる4つの方策について解説します。
設計標準化・部品の共通化
製品の開発段階では、設計の標準化が有効です。過去の図面を流用できるようにすれば、個別に仕様を検討せずに済みます。また、部品の共通化は切り替え時間や在庫管理を簡素化できるメリットもあります。
不良率の削減
製造時間を最も長引かせるのが、不良の発生です。不良が発生すれば時には生産ラインを止めて原因を追究しなければなりません。そのため不良率の削減はリードタイムを短縮するうえで必ず必要となる対策です。
ポイントとなるのは検査工程をどこに置くかです。最後に検査工程を置くのはもちろんですが、途中の工程でも検査を行うことで不良品の早期発見につながります。特にボトルネック工程の前に検査工程を設けることで直行率を上げれば製造リードタイムは短くなります。
レイアウト変更
工場や倉庫のレイアウトを工夫することで、導線を作り出します。例えば、製品の保管場所は入り口と出口を分けると流れをつくることができ、フローショップと呼ばれるライン配置に近づきます。入出庫や物を探す時間を削減することは、リードタイム短縮につながります。
予告・進捗開示
自社の発注計画をサプライヤーに開示しておくのは、調達リードタイム短縮に効果的です。事前に予告を出しておくことでサプライヤーからの納期遅れを防ぐことができます。
これは自社の工程においても同じです。工程ごとの進捗状況を社内に開示することで、後工程は準備に取り掛かれます。工程間の連携を密にすることは効率を上げる要因となります。
まとめ
リードタイムは生産計画を立てる際にまず考慮すべき重要な概念です。いち早く顧客に製品を納品できるようにリードタイム短縮はどの企業も取り入れますが、安易に導入してはいけません。
まず現場の状況をよく確認してから課題をリストアップする必要があります。
この記事を参考に自社のリードタイムの短縮について一度検討してみてはいかがでしょうか。
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(画像は写真ACより)