弊社のノーコードツール導入プログラムを通じて、50社に「kintone」、「Appsheet」、「Power Apps」を導入しました。
この成果を、単なるアプリ導入実績として捉えるのは少しもったいないと感じています。
本質は、「ツールが入ったこと」ではありません。
現場の人たちが、自分たちの業務文脈に沿ってデータを入力し、意味のある形で蓄積できるようになったことです。
多くの企業でデータ活用が進まない理由は、AIがないからでも、ITが弱いからでもありません。
現場の業務と結びついた“自分たちの言葉で語れるデータ”が存在しないことにあります。
数字はあっても、「なぜこの数値なのか」「どう判断すべきか」が説明できない。
その状態では、生成AIを導入しても、活用は進みません。
今回の50社は、アプリを通じて「誰が」「どのタイミングで」「どんな意図で」データを入力するのかを整理し、自分たちの業務の言葉でデータを作り始めています。
これは、生成AI活用における最も重要な前提条件を、すでに満たし始めている状態だと考えています。
私が描いている未来は、いきなりAIがすべてを自動化する世界ではありません。
例えば、現場で品質データを入力し、その傾向をもとに「いつもと違う状態」を検知する。
一定のしきい値を超えた場合に、生産を止める、条件を見直す、人に判断を促す。
データ入力 → 判断支援 → 設備や工程へのフィードバック。
人・データ・AIが自然につながる制御の仕組みです。
重要なのは、AIが判断することではなく、「なぜ止めたのか」「なぜこの判断をしたのか」を現場が理解できることです。
そのためには、最初から業務と切り離されたデータではなく、現場の文脈を持ったデータが必要になります。
今回の取り組みは、生成AIを“導入する前段階”を丁寧に作る実践でもありました。
AIを使うこと自体を目的にするのではなく、AIが意味を理解できる世界を、現場と一緒に先につくる。
その延長線上にこそ、本当に使われるAI活用が生まれると考えています。
この50社の取り組みは、これから始まる変化の「入口」にすぎません。
しかし、その入口に立てている企業は、まだ多くありません。
ここからどんな未来につながっていくのか、とても楽しみにしています。







