第4回コラム「温かいテクノロジーで、技術や想いを残していきたい」

この世の中には、カタチとして「残る仕事」と「残らない仕事」があります。正確には、人々に「認知されやすい」ものと、「されにくい」ものがあると、私は考えています。

私の祖父は大工でした。幼い頃、「あの橋は、おじいちゃんがつくったんだ」と、母が教えてくれた橋の姿を目で捉えた時、私はとても誇らしい気持ちになりました。

自分の手掛けた仕事が、仕事が終わった後も、人に忘れられずに残り続ける。私はこれを、カタチとして「残る仕事」としてとらえています。

一方で、人から認知されにくい仕事、カタチとして残らないため、伝え、理解してもらうことが難しい仕事もあります。

私は、今ものづくりの、特に生産現場で、この感覚を持っています。

とある技術者の方との出会い

「ものづくりって、“モノ”をつくるのだから、カタチに残るのでは?」

そう疑問に思った方もいると思います。私もかつてはそう考えていましたが、実際にはものづくりには、様々な「残らない仕事」がたくさんあるのです。

先日訪れた、量産体制を構築している、製造現場での出来事です。毎月、何十万と部品を生産している現場です。

その工場内には、とある小さな部屋がありました。人が一人入るのもやっとなくらいの小さなスペースでしたが、その部屋だけ、音が遮断される構造になっていて、一歩入るだけでまるで別の世界にいるように感じました。

その中で、私はひとりの技術者のお話しを伺いました。別の企業で定年を迎え、引退しようとしていたところ、今の会社からスカウトされて、転職されたそうです。彼は、静かなその部屋の中で、治具を作っていました。図面は、鉛筆に鉄の定規を使って描かれていて、机の横には、相方の旋盤が置かれていました

「10年待っているけれど、まだ技術の後継者が来ないんだよなあ」

そう寂しそうに呟いたその方は、これまで腕1つでさまざまな加工をされてきました。加工だけではなく、電気の知識もお持ちで、その機械を扱える人も、その方以外いないそうです。機械のメンテナンス方法は引き継げますが、その人の腕ひとつでなされてきた加工技術は、簡単にはマニュアル化できません。

ものづくりの「生産技術」はカタチに残りづらい。現場は、工場内で個別最適化され、そのプロセスに独自性・優位性があるため、表に出ることが少なく、それ故に後継者を見つけることも難しいと言われています。要は、人から認知されにくい仕事、カタチとして残らないため、伝え、理解してもらうことが難しい仕事なのです。

けれど私は、その方のお話に聞き入ってしまいました。興味を持って質問すると、私が理解できるようにかみ砕きながら、たくさん答えてくださいました。ワクワクしました。そして、この技術や想いが、このままでは失われてしまうかもしれないことに、とても危機感を覚えました。

「数字」も「想い」も、どちらも残して行きたい

私は仕事を通して、ITシステムや、時には専用機(ロボット)の導入をサポートしていますが、その時に大切にしたいことは、機会や人の仕事を奪う「冷たいテクノロジー」ではなく、人の想いや知恵を残せる「温かいテクノロジー」活用をすることです。

当然、そのテクノロジーを活用することにより、PLにどのようなインパクトがあるのか、投資対効果はどうなのかなど、「数字」を算出することもとても大切です。

ですが、私は、数字には出てこない、あの技術者の方が語ってくださったような「想い」も、同時に大切にし、残して行きたいと考えています。それが、日本を支えてきた技術を絶やさず残し続けることに繋がり、ものづくりの世界を、ひいては世の中を、より豊かにできると信じているからです。

今、私はその方と、とあるプロジェクトで一緒に専用機の導入を進めています。その方がこれまで培ってきた知恵を、想いとともに、チームに伝承していただいています。

システムや自動機を通じて、技術自体を残し、その背景にある「想い」も、同時に伝えていくこと。

それが、私が「温かいテクノロジー」を通じて、取り組んでいきたいことです。

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