生産効率を向上するためのIT利用で、工場はどう変わる?

技術者不足やコストの問題により、AIやIoTのようなIT技術の導入が遅れている中小企業は少なくありません。大企業においても、せっかく導入したIT技術を効果的に使えていないケースが散見されます。

今回のコラムでは、工場でIT技術を活用するメリットやスマート工場の成功事例をご紹介します。

工場でのIT技術活用のメリット

本項では、工場でITを活用することで得られる具体的なメリットについて説明します。

現状把握

近年の製造現場では「見える化」という言葉を耳にする機会が多くなりました。製造現場では作業者と機械がせわしなく動き回っていますが、管理者が目視で全体の稼働状況を正確に把握することは困難です。

1960年代に機械と作業者の状態を表示する管理盤が誕生しましたが、当時は機械の異常発生や作業者からの呼び出し程度の情報しか表示できませんでした。

最新のIT技術を活用すれば、機械にどのような異常が起きているかだけでなく、発生のタイミングや前兆などを調べることができます。機械の稼働状況に関わる一連の情報を精査することにより、適切なメンテナンス時期を判断し、トラブルの予防が可能になります。

エネルギー効率の最適化

今後の製造業界において、大きな課題となるのがエネルギー問題です。環境保護の観点から省エネルギーの需要が高まっていますが、IT技術を活用すればエネルギー消費効率を向上することができます。

工場で主にエネルギーを使うのは生産設備ですが、空調設備や照明などでもエネルギーを消費します。エネルギー効率を改善するためには、IT技術を活用して各設備で消費するエネルギー量をリアルタイムで測定し、管理することが必要です。

生産設備で使われるエネルギー量の増減に合わせて空調設備の運転を調整すれば、工場内で消費するエネルギー量を安定させることができるでしょう。

情報の蓄積

品質を維持するために欠かせないノウハウの多くは熟練した作業者が持っていますが、感覚や勘に基づく技術がほとんどのため、簡単に継承することができません。

IT技術を活用してノウハウをデータベース化すると、熟練の作業者が退職した後も技術を会社の知的財産として残すことができます。

IT活用の流れ

本項では、ITを導入する上で明確にすべき課題や準備について説明します。

経営課題

まず初めに、IT技術を導入して解決したい経営課題を明確にします。例えば、収益の向上を目標とした場合、どのようなアプローチが必要なのか検討しましょう。

生産性を向上させるのか、品質を上げるのか、納期を短縮するのか、解決する経営課題によって導入するITシステムが異なります。

生産革新

IT導入時に直面する問題の一つに、定型業務の見直しがあります。定型業務とは、何年間も方法を変えずにおこなってきた業務です。製造現場でも、古い機械を使って昔ながらの方法で製品を作り続けている場合があります。

これらの業務にITを導入するためには、古い生産方式を一新するような生産革新をおこなわなければなりません。定型業務を見直し、IT技術の導入によってどれほどの改善効果が見込めるか検討してみましょう。

IT技術の活用

IT技術の発展により、生産工程の情報を収集することが容易になりました。しかし、単に情報をデジタル化しただけでは、ITを活用しているとはいえません。

IT技術を導入するなら、データを活用できるシステムを整備することが大切です。

計算ソフトを使ってデータを自動集計するだけでなく、データベースを使って知りたい情報の検索を容易にするなど、各種のデータを活用できる環境を整える必要があります。

スマート工場とは

AIやIoTなどのIT技術を導入している工場はスマート工場と呼ばれています。本項では、中小の工場におけるスマート工場の構成について説明します。

クラウドコンピューティングサービスの導入

IT技術を利用するにはコストがかかります。大企業はともかく、資金に余裕がない中小企業では自力でシステムを整備することは難しいでしょう。導入コストを抑えるために、クラウドコンピューティングサービスを利用するのも一つの方法です。

クラウドコンピューティングサービスとは、最新のハードウェアやソフトウェアをインターネット経由で提供するサービスです。

有名なクラウドコンピューティングサービスには、アマゾンのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)・グーグルのGCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)・マイクロソフトのAzure(アジュール)があります。

クラウドコンピューティングサービスを利用することで、ビッグデータの管理や最新のAIによる精度の高いデータ解析が可能になります。

フォッグ・コンピューティング

クラウドコンピューティングサービスとデータを連携するためには、工場とクラウドをつなぐシステムが必要です。クラウドにつなぐためのシステムをフォッグ・コンピューティングと呼びます。

データを送信する前に簡単な処理をおこなうことで、クラウドにかかる負担を減らせるのがフォッグ・コンピューティングのメリットです。また、インターネットに障害が発生したときは、一時的にフォッグ・コンピューティングにデータを蓄えることができます。

エッジ・コンピューティング

エッジ・コンピューティングとは、ネットワークに接続されているセンサーや測定器で情報を処理することです。

クラウドコンピューティングでは集約したサーバーにデータを集めて処理するのに対し、エッジ・コンピューティングはネットワークに接続するIoT機器で情報処理をおこないます。

ネットワークの端末側で情報処理をおこなうことで、通信コストの削減やクラウドサーバーの負荷分散、データ漏洩リスクの低減などのメリットがあります。

スマート化の事例紹介

本項では、IT技術を利用したスマート化の事例を紹介します。

作業工程の見える化

石川県にある株式会社小林製作所は、半導体製造装置や工作機械向けの精密板金加工をおこなっている企業です。

顧客のニーズに対応しつつコストを削減するために、同社ではITを活用した製造履歴追跡システム「Sopac-C(ソパック・シー)」を開発しました。このシステムは90台のWebカメラで撮影した記録画像と生産進捗管理情報を連携しているため、製品製造の様子をすぐに確認することができます。

上記のシステムを活用して業務効率を改善したことで不良率が低減し、小林製作所では生産性が20%向上しました。自社工場での成功をきっかけに、小林製作所はSopac-Cを60社以上の企業にライセンス販売しています。

クラウドサービスの活用

愛知県の株式会社セイリョウラインは、全国規模で一般貨物自動車運送事業を展開しています。

「事故を起こさずにお客さまに安全に荷物をお届けすること」を重要な経営課題としているセイリョウラインは、クラウドのデータベースサービスを活用した基幹システムを自社開発しました。

基幹システムは配車管理や会計管理、顧客カルテなどの管理機能を備えており、社内業務の徹底した合理化がおこなわれて業務スピードが向上しました。

特に顧客カルテの導入効果が大きく、新人乗務員でも顧客の細かい要望に応えられるため、企業の信頼性向上に貢献しています。基幹システムの導入により、セイリョウラインの売り上げはシステム導入前と比べて約15%増加しました。

MRPの活用

富山県にある明治薬品株式会社は、医薬品や食品の製造および販売をおこなっています。原材料のリードタイムを適正化し、速やかな生産・販売によるキャッシュフローを向上するために、MRPを活用しています。

MRPとは「Material Requirements Planning」の略称で、資材所要量計画のことです。MRPを活用した結果、明治薬品では原材料の購買精度が上がり、発注までのリードタイムの短縮に成功しました。

さらに、スマートデバイス(タブレット)を倉庫の入出庫業務に導入し、広い倉庫での作業効率が向上しました。作業中に問題が発生したときはタブレットで写真を撮って速やかに報告できるため、スマートデバイスの導入はトラブル防止にも役立っています。

まとめ

IT技術は導入と維持管理にコストがかかりますが、生産性向上やエネルギー効率の最適化などに高い効果を期待できます。

導入コストを抑えたいときは最新技術を提供しているクラウドサービスの利用を検討してみましょう。クラウドサービスにデータを上げる仕組みは各社で構築する必要がありますが、業務をスマート化して生産効率が向上すれば業績アップも夢ではありません。

(画像は写真ACより)

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